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<1954年駿河の昆虫目次(No.5〜8)>

 No.5 (発行:1954年3月20日)

永井洋三:梅ヶ島産昆虫資料(第1報)83-86
 1953年7月12日,梅ヶ島温泉および安倍峠〔静岡市〕における昆虫類の記録.内容は半翅目(カメムシ科,クヌギカメムシ科,ナガカメムシ科,アワフキムシ科,ヒラタヨコバイ科),鱗翅目(マドガ科,ツバメガ科,シャクガ科,トガリバ科,ドクガ科,イカリモンガ科,ヤガ科,ヒトリガ科,テングチョウ科,タテハチョウ科,ジャノメチョウ科),鞘翅目(ハネカクシ科,ジョウカイ科,ホメル科,ハムシダマシ科,ゴミムシダマシ科,カミキリモドキ科,ネスイムシ科,テントウムシダマシ科,ゾウムシ科,カミキリムシ科,ハムシ科,コガネムシ科)などを含む.

朝比奈章吾:達磨山採集記 86-87
 1953年5月15日,7月29日の春夏2回の調査.クロシジミ,オオウラギンスジヒョウモンなど18種の報告.

高橋真弓:静岡県に於けるクロコムラサキの分布(第2報) 88-94
 静岡県およびその周辺におけるクロコムラサキの分布を詳細に論じており,内容は,資料蒐集の方法,クロコムラサキの分類学的位置および国内分布,静岡県における地理的分布,近接地方における分布,生態的分布,分布の一般的傾向,参考文献などからなっている.コムラサキはこの地域に広く分布するがクロコムラサキの分布は,東は富士川,北は南アルプス中部,西は矢作川にかこまれる地域に限られ,分布を左右する因子として自然的条件以外に地史的条件を重視している.


      インセクトノート
25 増田元:ヤマトシジミの異常型 95
 1953年9月20日,安倍郡服織村慈悲ノ尾〔静岡市〕における異常型1♀の記録.

26 朝比奈章悟:ルリタテハの異常型 95
 1953年7月26日,〔富士宮市〕富士山1〜2合目(大宮ロ)における異常型1♂の記録.

27 坂本国雄:榛原郡南部のゴイシシジミ 95
 地頭方村遠渡坂〔相良町〕および川崎町静波〔榛原町〕の記録をあげている.

28 坂本国雄:福用のウスイロコノマチョウ 96
 1953年10月11日,榛原郡五和村福用〔金谷町〕の大井川土手付近で1頭を記録.

29 紅林良治:金谷地方で採集された蝶2,3種
 クロヒカゲモドキ(白光山)〔八高山〕,クジャクチョウ(金谷町二軒屋),クロコノマチョウ(金谷町,1952年8月)など6種の記録.

30 岡野義治:志太郡中部Zephyrus 5種の記録 97
 ミズイロオナガシジミ(岡部町高草山頂上),アカシジミ(朝比奈村谷川ロ〔岡部町〕),オオミドリシジミ(葉梨村下藪田潮出頂上〔藤枝市〕),ウラキンシジミ(1953年6月14日,六合村東光寺二子山頂上<400m>〔島田市〕1♂),ウラゴマダラシジミ(瀬戸谷村上滝沢,坂下〔藤枝市〕など5種の記録.〔ウラキンシジミの記録は駿河湾に近い低地帯の記録として注目される.〕

31 北条篤史:清沢村にてエゾスジグロチョウ採集 98
 1953年9月23日,安倍郡清沢村〔静岡市〕で夏型1♀の記録.

32 北条篤史:梅ケ島村蝶類採集報告 98
 1953年8月23日〜24日,安倍郡梅ヶ島村六郎木および安倍峠〔静岡市〕における記録.オオミスジ(六郎木),ミヤマチャバネセセリ(関の沢)など9種の記録.

33 高橋真弓:クロヒカゲモドキ突先山東側にも分 98
 1953年9月4日,安倍郡美和村奥長島〔静岡市〕で1♂を記録.

34 高橋真弓:中藁科村大原川のスミナガシ 98
 1953年9月6日,大原川の水見色〔静岡市〕,2♀♀.

35 高橋真弓:玉川村中河内川にてクジャクチョウを目撃 98
 1953年10月6日,安倍郡玉川村と井川村の境界付近〔静岡市〕で1頭を目撃した記録.1952年10月4日玉川村腰越〜横沢でも1♂を採集したことを述べている.

36 高橋真弓:美和村にオオムラサキ棲息す 99
 1954年1月10日,安倍郡美和村足久川〔静岡市〕で越冬幼虫3頭採集した.ほかにウラゴマダラシジミ(卵),ゴマダラチョウ(幼虫)などの報告.

37 高橋真弓:ヒメハルゼミ北部山地に分布広し 99
 安倍郡中藁科村奈良間清沢村赤沢,寺島,鍵穴,小島,玉川村中沢,上助〔いずれも静岡市などに分布することを確認.

38 伊東忠則:庵原郡富士川町のオオウラギンスジヒョウモンに就いて 99
 1953年9月11日,庵原郡富士川町中之郷新町で1♀を採集し,1♂を目撃した記録.

39 渡辺定弘:秋の富士山大宮口の蝶 100
 1953年9月20日,スジボソヤマキチョウ,ヒメシロチョウ,ゴマシジミ,オオウラギンスジヒョウモンなど17種の記録.

40 渡辺定弘:中里〜沼久保聞でクジャクチョウ 100
 1953年10月25日,富士宮市沼久保,中里間で1頭を目撃した記録.

41 岡野義治:富士岡村の蝶追記 100
 1953年8月10日,富士東麓駿東郡富士岡村〔御殿場市〕で記録されたものとして,チャバネセセリ,ヘリグロチャバネセセリなど12種をあげている.〔ヘリグロチャバセセリは再検討を要する.〕

42 朝比奈章悟:富士南麓吉原市付近のツマグロヒョウモン 100-101
 1953年7月25日,富士郡大淵村大久保〔富士市〕で2♂♂を記録.

43 桐竹陸好:太郎坊・滝ケ原・御殿場間の蝶2・3 101
 1943年8月2日〜7日,軍事教練中の観察記録.ヒメシロチョウ,ヒョウモン類,コムラサキなどについて述べている.

44 岡野義治:タテハチョウ2種の遅期発生について 101-102
 アカタテハが10月27日,ルリタテハが10月25日に羽化した記録.

45 伊藤真平にクロコムラサキの飼育結果 102
 クロコムラサキから得た55卵中,14頭が蛹化し,5♀♀8♂♂がいずれもクロコムラサキとして羽化した記録.

46 丹下仁:単独飼育と集団飼育に於ける成長速度比較の一例 102
 1953年5月にコミスジから採卵し,単独個体と7頭からなる集団の発育速度を比較した.集団飼育の場合,単独飼育の場合よりも発育日数がすくなくなることを報告している.

 No.6 (発行:1954年6月12日)

岡野義治:早春の寸又峡昆虫調査 103-106
 〔1954年〕3月17日〜18日および4月3日〜5日にかけての千頭〜大間〜千頭ダム〔本川根町〕の調査.ミヤマセセリ,エゾスジグロシロチョウなど蝶類15種のほか,蛾類1種,膜翅目12種,双翅目22種,長翅目,脈翅目,半翅目各1種などの報告.

高橋勝夫:高山産ギフチョウ報告 107-108
 〔1954年〕3月26日,清水市高山<830m>,ギフチョウ2♀♀.

田沢英之:大丸山のギフチョウ 108
 1954年4月4日,蒲原町大丸山<571m>,ギフチョウ,コツバメ,ミヤマセセリなど

百行義治:志太郡北部の蝶 108〜109
 1954年5月1日〜3日,志太郡瀬戸谷村蔵田〜石上〔藤枝市〕の調査.オナガアゲハ,モンキアゲハ,コジャノメ(いずれも蔵田)などのほかにカンアオイの1種を確認,アオバセセリ,オナガアゲハ,ウスバシロチョウ,トラフシジミ(いずれも石上)など26種の記録.

坂本国雄:大井川中流家山付近のウスバシロチョウ 109-110
 〔1954年〕5月2日,榛原郡家山町家山〔川根町〕〜抜里〜久野脇〜志太郡塩郷〔以上中川根町〕の調査.ウスバシロチョウ(家山,抜里,久野脇),ミヤマシジミ(久野脇)など.

杉山真也:晩春の玉川村中河内川の蝶類 110〜111
 1954年4月29日,玉川村中河内川流域〔静岡市〕.チャマダラセセリ(奥池ケ谷),ウスバシロチョウ(奥ノ原,奥池ケ谷,栗駒)などの記録.

北条篤史:ウスバシロチョウを三月に採る 111
 〔1954年〕3月30日,清沢村久能尾〔静岡市〕,ウスバシロチョウ1♂を採集した記録

北条篤史:安倍奥大河内村有東木のウスバシロチョウ 112
 〔1954年〕5月16日,安倍郡大河内村有東木〔静岡市〕でウスバシロチョウを採集した記録.

北条篤史:大川村栃沢採集記 112
 [1954年]4月25日,安倍郡大川村栃沢〔静岡市〕.チャマダラセセリ,ウスバシロチョウなどの報告.

高橋真弓:1954年春期の蝶類資料 113
 チャマダラセセリ(玉川村奥池ケ谷〔静岡市〕),ギフチョウ(庵原村高山,小島村宍原〔以上清水市),山梨県南巨摩郡万沢村太巻峠,富河村大峠,樽峠〔以上富沢町〕),ウスバシロチョウ(安倍郡井川村井川,中山,大島,田代,小河内,上坂本〔以上静岡市〕,山梨県南巨摩郡睦合村折付〔南部町〕),シータテハ(富河村石合〔富沢町〕),キマダラヒカゲ(井川村大日峠<600〜800m>〔静岡市〕黒化が著しいことを指摘)などの報告.〔キマダラヒカゲはすべてヤマキマダラヒカゲである.〕

渡辺定弘:富士郡下に於ける今春のギフチョウ新産地 113-114
 白糸村狩宿〔富士宮市〕,柚野村桜峠〔芝川町〕,白糸村佐竹〔富士宮市〕などの記録.

渡辺定弘:柚野村にウスバシロ 114
 1954年5月16日,柚野村西ケ谷戸付近〔芝川町〕,1♂.

渡辺定弘:朝霧高原採集記録 114
 〔1954年〕5月30日,ギンイチモンジセセリ,ウスバシロチョウ,ヤマキチョウなど7種の報告.

宮崎壮之助:焼津市豊田付近に分布する蛾類 115-116
 スズメガ科(12種),シャチホコガ科(4種),ドクガ科(4種),カレハガ科(1種),ヤママユガ科(2種),イボタガ科(1種,),ヤガ科(18種),シャクガ科(7種),トウガ科〔ヒトリガ科〕(3種),マダラガ科(3種)などの報告.

永井洋三:静岡市付近のメイガについて(1)117-118
 ツトガ亜科のシロスジツトガ,クロマダラツトガなど9種を報告.

高橋真弓:静岡県のギフチョウとウスバシロチョウの分布 118-135
 上記2種の分布について地理的分布の大要,気候との関係,食草との関係,棲息地の状態,垂直分布などから論じている.分布については筆名自身の調査にくわえて過去の文献も検討し,静岡県とその周辺における2種の分布が詳細にのべられ,とくにギフチョウと各種のカンアオイ類との関係を重視している.


      インセクトノート
47 永井洋三:タケウチトゲアワフキ本県に産す 135
 〔1954年〕5月16日,安倍郡大河内村有東木〔静岡市〕でシナノキから本種の幼虫,成虫を多数発見した.

48 岡野義治:蔵田笹間方面の蛾二・三 135-136
 〔1953年〕5月22日〜24日および〔1954年〕5月1日〜3日,市ノ瀬,蔵田,高根山〔藤枝市〕において,サカハチクロナミシャク,ミスジツマキリエダシャク,アトボシエダシャク,フカハラゴマダラヒトリ,キハラゴマダラヒトリなどを記録.

49 高橋勝夫:興津川上流両河内村の蝶類 136
 〔1954年〕5月5日,両河内村〔清水市〕でオナガアゲハ,モンキアゲハ,ミヤマカラスアゲハなどを記録しているが,目的のウスバシロチョウは発見していない.

50 丹下仁:暁の採集と黄昏の採集 136-137
 1953年7月16日午前6時〜8時,長野県上伊那郡南箕輪村南原でホシミスジ,ウラゴマダラシジミ,ウラナミアカシジミ,クロミドリシジミ,ダイセンシジミ,コキマダラセセリなど,同年7月24日午後5時〜6時,長野県赤穂町大田切川でミヤマシジミ,クロツバメシジミ,コキマダラセセリなどの記録.

51 渡辺定弘:ヒメギフチョウの食草について 137
 ヒメギフチョウの食草として,ウスバサイシン,オクエソサイシンが適するのは葉がうすいためであって葉のうすいランヨウアオイでも飼育できるし,うすくさいたキソジノカンフオイで飼育に成功した.普通のカンアオイ類でもうすくさいて実験してみてはどうかという筆者の兄からの手紙の紹介をしている

52 高橋真弓:ヒメギフチョウとカンアオイ 137
 ヒメギフチョウ4令幼虫にスズカカンフオイをあたえたが好まず,ランヨウアオイをあたえたらよく食して蛹化したことを報告.

53 渡辺定弘:アゲハチョウのサイフォン 138
 1953年9月20日の富士山表口登山道の富士郡富士根村篠坂〔富士宮市〕で馬糞に止ったアゲハが腹端から褐色の水滴を排出するのを観察.

54 田沢英之:カラスアゲハの早期発生 138
 1954年4月3日,静岡市賤機山山頂で1♂を採集した記録.

 No.7 (発行:1954年10月20日)

大野正男:朝霧高原付近のハムシ科について(I) 139-146
 1953年7月14日〜18日,富士郡朝霧高原〔富士宮市〕における調査.クビボソハムシ亜科,Clytrinae,ツツハムシ亜科,ツヤハムシ亜科,サルハムシ亜科,ハムシ亜科,ヒゲナガハムシ亜科,ノミハムシ亜科,トゲハムシ亜科,カメノコハムシ亜科などに属する51種の報告.

安藤博夫:大井川支流信濃俣河内の蝶類 146-151
 1954年8月10日〜14日,[静岡市]大日峠〜井川〜信濃俣河内の地域における調査.ミスジチョウ(下之島),ホシミスジ(大日峠),オオウラギンスジヒョウモン(大日峠),エルタテハ(下之島〜信濃俣河内),クロヒカゲモドキ(ロ坂本,大日峠),ヒメキマダラヒカゲ(大日峠),クロシジミ(口坂本,下之島),ムラサキシジミ(大日峠),キバネセセリ(下之島〜イ言濃俣河内),チャマダラセセリ(大日峠),コキマダラセセリ(大日峠,信濃俣河内)など53種の報告.

永井洋三:梅ヶ島昆虫資料(第2報) 152-153
 1954年7月3日〜4日および24日〜25日,梅ヶ島温泉,安倍峠〔静岡市〕におけるカミキリモドキ科,クビナガムシ科,カミキリムシ科などに属する鞘翅目の昆虫20種に関する報告.


      インセクトノート
55 桐竹陸好:静岡市のオオゴキブリ 154
 1954年8月28日,夜灯火に飛来した1頭の記録.

56 桐竹陸好:市内石部にヒメハルゼミ棲息す 154-155
 1954年7月9日,静岡市石部山に生息を確認.ほかにハルゼミ,アブラゼミ,ニイニイゼミ,ヒグラシ,クマゼミ,ツクツクホウシ,ミンミンゼミの分布を報告.

57 安藤博夫:大井川上流信濃俣河内のアカエゾゼミ 155
 〔1954年〕8月11日,信濃俣河内の河原〔静岡市〕における1頭の記録.

58 増田元:富士田貫湖のミヤマカラスシジミ 155
 〔1954年〕8月7日,1♂を採集しほかにチャマダラセセリ,クロシジミなどを報告.

59 高橋勝夫:富士南麓吉永村の蝶 155-156
 〔1954年〕8月14日,桑崎〜勢子辻〔富士市〕.ヒメシロチョウ,オオウラギンスジヒョウモン,ホシミスジなどの報告.

60 北条篤史:安倍川上流梅ヶ島採集記 156
 〔1954年〕8月11日〜13日,アイノミドリシジミ(安倍峠),クロヒカゲモドキ(温泉)などの記録.

61 北条篤史:静岡市と大河内村のオオムラサキの採集記録 156-157
 静岡市用宗城山,安倍郡大河内村平野〔静岡市〕の採集記録.

62 高橋真弓:十枚山系真富士山の蝶類 157
 1954年7月13日,アカシジミ,クモガタヒョウモン,ウラギンスジヒョウモン,アサギマダラなどの記録.

63 田沢英之:玉川村における蝶類採集記 157-158
 1954年7月24日〜26日,安倍郡玉川村〔静岡市〕上助〜横沢〜大沢の調査.チャマダラセセリ(横沢),ミヤマカラスアゲハ(大沢),オオムラサキ(上助),クロヒカゲモドキ(横沢),オオミスジ(横沢)など21種の報告.

64 桐竹陸好:久能尾一坂野の昆虫 158-159
 〔1954年〕6月4日,安倍郡清沢村〔静岡市〕久能尾〜坂野,クロコムラサキ,ミスジチョウなど9種の記録.

65 岡野義治:藤枝市にゴイシシジミ産す 159
 〔1954年〕8月23日,藤枝市兵太夫の木尾川土手で採集し多数目撃したことを報告.

66 北条篤史:大井川塩郷採集記 159
 〔1954年〕8月24日,ウラギンシジミ,コムラサキなどの記録.

67 北条篤史:長野県上伊那郡南部飯島採集記 159-160
 〔1954年〕8月5日,オオムラサキ,ヒメシロチョウ,ムモンアカシジミ,エゾミドリシジミ,クロヒカゲモドキ,キマダラモドキ,オオヒカゲなどの記録

68 石井康雄:南アルプス北部のカミキリ 160
 〔1954年〕7月24日〜30日,仙丈岳〜アサヨ峰〜白根三山における採集記録.広河原〔山梨県中巨摩郡芦安村〕,マルガタハナカミキリ,カタキクロハナカミキリ,ヤツボシハナカミキリなど19種;北沢峠〔同芦安村〕,クモマハナカミキリ,カラカネハナカミキリ,ヨコモンヒメハナカミキリなど13種;仙丈岳〔長野県上伊那郡長谷村〕,クモマハナカミキリ,トホシハナカミキリなどの報告.

69 渡辺敬:賀茂郡下のウラナミシジミについて 160-161
 1954年5月,静岡県賀茂郡白浜村,浜崎村[下田市],上河津村〔河津町〕,三浜村[南伊亘町]における生態調査.三浜村では主として早生ソラマメに発生しており,他地域ではサヤエンドウが主体で発生密度は低い.以上の結果から本種がエンドウよりもソラマメの方を好むことを報告している.

70 水井洋三:春のウラナミシジミ飼育記 161
 フジの実とシロツメクサ,コモンベッチなどの花で飼育,フヅの実には食人せず,シロツメクサよりコモンベッチを好むようであったが,約70卵のうち羽化したのはわずか1頭のみであった.

71 永井洋三:ヒメジャノメの累代飼育 162
 1954年6月25日,イネから2卵塊6個の卵が採集され,それらを飼育したところ,幼虫,蛹はいずれも緑色であった.羽化した成虫を飼育箱中で交尾させ1♀から得た卵を飼育した.この第2世代の終令幼虫はすべて褐色型であったが,8個の蛹のうち6個は緑色型(羽化直後の蛹殼は淡色)であり他の2個の蛹殻は著しく褐色をおびていた.

72 北条篤史:本年のクロコムラサキについて 162
 1954年には南藁科村吉津,服織村慈悲ノ尾〔いずれも静岡市〕などにおいてクロコムラサの個体数が少なく,原因は生息地のヤナギが切られてしまったことによるとしている.

73 北条篤史:蝶三種の採卵結果 162
 長野県上伊那郡飯島産のオオムラサキをエノキで,諏訪市平石山産のチャマダラセセリをミツバツチグリで,ヒメヒカゲをヒカゲスゲで人工採卵した記録.

74 北条篤史:塩水を吸うアゲハチョウ 163
 1954年8月14日,静岡市用宗海岸における観察.

高橋真弓:富士川東側山岳地帯の蝶類 163-176
 1954年7月17日〜19日,山梨県西八代郡〔現在その一部は南巨摩郡に属す〕四尾連湖付近[市川大門町],佐野川〔南部町〕,長塩〜常葉川〔下部町〕などにおける調査.ヘリグロチャバネセセリ(市川大門町四尾連湖登口),ウラゴマダラシジミ(四尾連湖),シータテハ(籐田,四尾連湖),オオムラサキ(市川大門〜帯那峠,清水),ウラナミジャノメ(藤田,四尾連湖,長塩〜岩欠),キマダラモドキ(市川大門町四尾連湖登ロ,清水)などの報告[この地域の蝶相の特徴についてくわしく論じ,富士川中流地方の蝶相に関する最初の総合的報文.〕

 No.8 (発行:1954年12月26日)

坂本国雄:静岡県榛原郡の蝶(第1報)177-194
 静岡県榛原郡の蝶に関する総説で,各地域別の概説と各種の記録の解説からなっている99種をあげているが,注目すべきものとして,キバネセセリ,ウスバシロチョウ,スジボソヤマキチョウ,ミヤマシロチョウ,ウラギンシジミ,ウラクロシジミ,ジョウザンミドリシジミ,フジミドリシジミ,エゾミドリシジミ,クロシジミ,ミヤマシジミ,オオウラギンスジヒョウモン,ツマグロヒョウモン,ミスジチョウ,オオミスジ,ホシミスジ,シータテハ,エルタテハ,キベリタテハ,クロコムラサキ,ベニヒカゲ,クモマベニヒカゲ,ウラジャノメ,クロヒカゲモドキ,ウスイロコノマチョウ,クロコノマチョウなどのほか,迷蝶としてイワサキコノハチョウ,メスアカムラサキ,リュウキュウムラサキ,ヤマキチョウなどをあげている.〔このなかには,オオウラギンヒョウモン,ホシミスジ,ウラナミジャノメなど再検討を要するものが含まれている〕.

高橋真弓・渡辺定弘:富士山大宮口登山道1〜2合目蝶類分布調査報告 195-212
 1954年7月20日〜22日,富士山大宮ロ〔富士宮市〕.ヒメシロチョウ,スジボソヤマキチョウ,ウラゴマダラシジミ,メスアカミドリシジミ,ヒメシジミ,ヒョウモンチョウ,オオウラギンスジヒョウモン,ギンボシヒョウモン,ツマジロウラジャノメなどの報告.〔富士山の蝶相の成立を植生との関連から論じており,富士山における草原性蝶類の重要性が指摘されたのはこれが最初である.]