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<1968年駿河の昆虫目次(No.61〜64)>

 駿河の昆虫 No.61 (発行:1968年2月22日)

井上智雄:わらまきノート −1967年− 1717-1736
 樹幹にムシロをまいて冬季間これに侵入する昆虫などを調査し(わらまき法),1965年〜1967年の概要を報告.1965年10月24日〜翌年1月23日まで周智郡秋葉山で調査した結果,クサギカメムシ,ヤニサシガメ.オオトビサシガメなどが得られ,また,わらまきした樹種より周囲の調査では,ノコギリヒラタカメムシ,エサキモンキツノカメムシ,ブチヒゲヘリカメムシほか3種のカメムシ,アトキリゴミムシ,ヤスデ,ムカデ,クモ類が得られた,わらまきを地上部から地上2mまでのセットにした結果では,上部ほど侵入する総個体は多くなるという結論を得た.1966年10月〜12月まで〔引佐郡引佐町〕三岳山3地点の調査では,ヤニサシガメなどが得られたが総個体数は少なかった.なお,このわらまきを翌年4月9日に調査したところ,チャバネアオクサカメムシほか3種が得られ,厳寒期に侵入する種もあることを付記.また,わらまき侵人種には,ムシロまたは樹皮に多く付着する,2つのタイプに分類できる種のあることを述べている.1967年3月5日,志太郡岡部町三輪のミカン園ではヒメアカホシテントウ3頭のみが得られたことを報告

井上智雄:横川谷−ツマグロオオヨコバイと1年− 1737-1751
 1966年3月27日〜1967年4月30日まで計11回にわたって,〔天竜市〕二俣川支流の横川でツマグロオオヨコバイの動態を観察調査した.本種が秋〜冬に世代を変えるか,夏に世代を変えるかを知るため,春に171頭,秋に152頭をエナメルでマークして放ち,各調査日に回収をはかったが,4月29日に1頭を回収したほかはまったく回収できず,未検討に終わった.本種は横川谷においては,3月下旬〜4月中旬にはガマズミ,4月下旬〜5月にはイタドリ,9月〜10月にはクサマオの3種で多く採集できることなどを述べている.本種の観察のほかに1966年〜1967年の調査において採集,目撃した昆虫は計85種を記録.おもな種としてトゲカメムシ,サカハチチョウ,ウスブチミャクヨコバイがあり,トゲカメムシは西部地方の南限記録.〔クロフハネナガウンカについての同定は再検討を要する.〕

石間岑生:安倍峠でヒサマツミドリシジミ 1752
 1967年7月16日,安倍郡梅ヶ島村〔静岡市〕安倍峠で本種の1♂を採集.その他メスアカミドリシジミ,フジミドリシジミなどを採集している.

石間岑生:井川峠でもヒサマツミドリシジミ 1752
 1967年7月24日,[静岡市]井川峠西側のくぼ地で本種の1♂を採集.この地点では,前年の7月21日やはり1♂を採集.その他にウラギンシジミ,アイノミドリシジミ,ウラゴマダラシジミ,ウラクロシジミなどをあげる.

菅原 隆:愛鷹山位牌岳のウラギンシジミ 1753
 1967年7月21日,愛鷹山位牌岳〔駿東郡〕頂上三角点付近で1♀1♂.キマダラセセリなど6種を含む.

 駿河の昆虫 No.62 (発行:1968年7月31日)

渡辺一雄・神保吉沖:アサギマダラの越冬について 1755-1757
 1968年1月5日,引佐郡の山地で,本種幼虫の付着していたキジョランの葉82枚をマークし,以後1月21日,2月11日,2月25日,3月5日に寄生数,各令期を調査した結果,越冬態は1〜3令まで認められたが,1〜2令が最も多いこと.1〜2月は絶食を続け移動することもほとんどないことを報告.また.静岡県西部地方における5種類のガガイモ科植物の分布図がある,

田島 茂・北条篤史:奥秩父周辺の蝶類分布調査 1757〜1768
 1967年4月27日〜8月6日までの10日間,奥秩父周辺(釜無川以東,大菩薩山塊以西.八ケ岳以南,甲府盆地以北)における調査.チャマダラセセリ,ギンイチモンジセセリ,ヘリグロチャバネセセリ,ヤマキチョウ,ヒメシジミ,アサマシジミ,ミヤマシジミ,フタスジチョウ,コヒョウモンモドキ,コヒョウモン,ヒョウモンチョウ,ウラジャノメなど52種の報告.

高橋真弓:ルリタテハの季節型出現期に関する資料 1768〜1775
 (1)発生回数と季節型については,静岡市およびその付近の平地では年4回で第4化が秋型.海抜1500m以上の大井川上流の東俣,西俣〔静岡市〕などは2回で第2化が秋型となるこれらの中間高度の地帯では年3回の発生を推定.(2)秋型の羽化期については,1948年〜1964年の静岡,山梨両県26例の秋型採集記録表および季節型出現期と標高との関係を図示し.山岳地帯では8月中に,静岡市および付近の平野部では9月下旬に,駿河湾沿岸や伊豆半島の海岸地帯では10月以降に秋型の羽化が行なわれることを指摘.(3)季節型の生ずる原因としては,会田重道の実験から推定し,季節型発現の主要な条件は日照時間と考えられるが,低地で秋型の羽化がおくれることから,温度条件も無視できないことを指摘している.

高橋真弓:エゾスジグロシロチョウの食草による比較飼育 1775-1779
 1968年4月.富士宮市狩宿および静岡市大岩東〔大岩北町の誤り〕から採集した♀から採卵し,イヌガラシ,スカシタゴボウ,タネツケバナ,キャベツの5種で飼育し,蛹化率,羽化率.発育日数,羽化個体の大きき,食草と発育との関係などを調査した.その結果,5種のアブラナ科植物により少なくとも一世代の飼育は可能であること,5種の中では.イヌガラシを用いると大型の個体が羽化する傾向があり,発育期間も遅延しないので,比較的すぐれた食草であることを推定.

高橋真弓:1968年ギフチョウ調査記録 1780-1782
 4月〜5月,富士宮市坂林東方および大倉付近〔富士郡芝川町〕,天竜市カレ山,清水市高根山南方(スズカカンアオイから卵塊),同平山〜瓜島(ランヨウアオイ,カギガタアオイから卵塊)などの成虫または卵の記録を報告.

狩野昭平:貫ケ岳のギフチョウ 1782-1783
 1968年4月20日,清水市旧両河内村樽から.樽峠,貫ケ広を経て山梨県南巨摩郡富沢町大城に至るコースでギフチョウを調査.樽峠〜平次の段〜貫ケ岳における成虫および卵(カギガタアオイから)の記録を報告.

狩野昭平:本栖湖パノラマ台付近のギフチョウとヒメギフチョウ 1784-1785
 1968年5月3日,本栖湖〔山梨県〕のパノラマ台でヒメギフチョウ1♀.烏帽子岳でギフチョウ2♂♂,同年5月6日,本栖湖パノラマ台でギフチョウ2♂♂,パノラマ台と三方分山の中間尾根でヒメギフチョウ1♂を採集した.この付近で両種を同一地点で極めて近い時期に,同一地点にきわめて近い距離で採集したこと,採集時の状況,採集個体の新鮮度からみて最盛期には両種が同時に飛翔していることを推定.

清 邦彦:本栖湖付近5月の蝶 1785-1788
 1964年5月31日,1967年5月3日〜4日.山梨県〔西八代郡〕上九一色村及び下部町の本栖湖を中心にウスバシロチョウおよびギフチョウの調査を試みたが成果はなかった.ギンイチモンジセセリ,ヤマキチョウなど36種を含む.〔No.63でヤマキチョウの採集地など訂正.〕

清 邦彦:御坂山脈ギフチョウ属調査報告 1788〜1792
 1968年4月〜5月,〔山梨県西八代郡〕市川本町〜四尾連湖〜蛾ケ岳〜三方分山〜本栖〜中ノ倉〜古関〜一之瀬駅,〔同南都留郡西桂町〕三つ峠駅〜三つ峠山〜清八林道〜河口.5月13日烏帽子岳山麓のフタバアオイの群落からギフチョウの1卵塊9卵を採集し.この地域におけるギフチョウの食草はフタバアオイであることを確認.ミヤマチャバネセセリ,クジャクチョウ,キベリタテハ,スジボソヤマキチョウなど22種の記録を含む.〔No.63にて,地図上の記号2箇所訂正.〕


      インセクトノート
524 田中 徹・内田正雄:櫛形山冬期採集記録 1793
1968年1月15日,[山梨県中巨摩郡櫛形町]高尾からの登山道で卵採集を行ない,アカシジミ,ウラクロシジミ,メスアカミドリシジミ,アイノミドリシジミ.ジョウザンミドリシジミの各卵を採集.

525 海野忠市:安倍郡大河内村でチャマダラセセリ 1793
 安倍郡大河内村〔静岡市〕渡本〜地蔵峠の竹ノ段で1♂.アオバセセリなど5種を含む.

526 高橋真弓:ツマキチョウの産卵植物3種について 1794
 1968年春,静岡市および清水市で本種がタイサイ,ジャニンジン,ヤマハタザオに産卵することを確認した.この中で,タイサイとジャニンジンヘの産卵は初記録であることを指摘.

 駿河の昆虫 No.63 (発行:1968年11月30日)

高橋真弓:3種のカンアオイによるギフチョウの飼育 1795-1799
 1968年清水市産の材料を用いて,ランヨウアオイ,スズカカンアオイ,カギガタアオイの3種を食餌植物として与え,全期間の飼育と途中で食草の転換を行ない最も適している種について検討した.その結果,ランヨウ>カギガタ>スズカの順で適しており,スズカでは蛹化した個体はなかった.ランヨウからスズカに食草転換をさせると転換後の発育が悪くなること,スズカで発育の悪くなった幼虫をカギガタに移しても発育はたやすく回復しないことなどを報告.

田島 茂:Anthocarisの種間交雑 1799-1801
 1967年6月1日,長野県諏訪郡富士見町にてミヤマハタザオから幼虫2頭を採集し飼育した結果,1頭は7月に死亡したが.翌年1月19日1♂が羽化した.いずれもツマキチョウとクモマツマキチョウの交雑によるものと推定.

田中幹康:1968年四尾連湖蝶類採集記録 1801-1805
 1968年6月30日,7月13日〜14日.8月18日の3回,山梨県西八千代郡市川大門町の四尾連湖およびその周辺でダイセンシジミ,ミヤマカラスシジミ,ヒョウモンモドキ,ウラナミジャノメ,キマダラモドキなど40種の記録.

梅谷正明・佐藤毅司・佐野文崇・佐野雅則・渡辺建司:芦川上流蝶類調査報告 1805-1809
 1968年8月1日〜5日の5日間,山梨県東八代郡芦川村芦川上流.アイノミドリシジミ,ウラギンシジミ.コヒョウモンモドキ.フタスジチョウ,エルタテハ,キバネセセリなど45種の報告.

清 邦彦:1968年三つ峠山の蝶 1809-1812
 1968年8月3日〜4日,〔山梨県南都留郡〕河口湖〜天上山〜霜山〜木無山〜三つ峠〜母の白滝〜河口湖.フタスジチョウ,ホシミスジ,ウラジャノメ,アイノミドリシジミ,エゾミドリシジミ.ミヤマシジミ,ミヤマカラスアゲハなど35種の報告.

清 邦彦:箱根山のウラナミジャノメ 1812-1813
 1968年6月23日.神奈川県小田原市を中心に本種の調査を行なった結果,水之尾など5地点で8頭を採集.以前の記録とともに,神奈川県における本種の分布を地図上に示し.箱根山の北麓を除いた山麓には連続して分布することを報告.なお三島市北沢〜111m三角点.および111m三角点付近の記録を付記.

諏訪哲夫:北遠地方のウラナミジャノメの記録 1813-1816
 1966年〜1968年の3年間,筆者の他2人により県西部の天竜市を中心に浜北市.[磐田郡]豊岡村における本種の採集記録をあげ.新産地として18ヵ所,既産地6ヵ所を地図上に示している.

石間岑生:安倍川上流におけるツマジロウラジャノメの分布 1816〜1817
 1968年9月20日,[静岡市]梅ケ島温泉と大谷崩に行く途中で本種2♀♀3♂♂,同年9月22日,安倍郡大河内村〔静岡市丿大和田〜安倍郡梅ケ島村〔静岡市〕関ノ沢にかけて本種9♀♀15♂♂を採集した.比較的山地性といわれる本種が大和田〜関ノ沢の300m〜400mの低い地点で採集されたこと,また安倍川水系では,大和田の採集が南限記録であることを指摘.スジボソヤマキチョウなど4種の記録を含む.


      インセクトノート
527 宮下哲夫:晩秋の桃木砿泉の蛾 1818
 1967年11月23日,山梨県中巨摩郡桃木砿泉〔桃ノ木鉱泉〕で,テンスジキリガ,クシヒゲシャチホコ,シロオビフユシャク,ナミスジフュナミシャク.ウスバフユシャクを記録.

528 宮下哲夫:櫛形山6月上旬の蝶 1818〜1819
 1967年6月5日〜6日,〔山梨県中巨摩郡〕櫛形山.ウスバシロチョウ,ギンボシヒョウモン,ギンイチモンジセセリなど11種の報告.

529 菅原 隆:愛鷹山赤淵川のキリシマミドリ確認 1819
 1968年3月19日.富士市桑崎より赤淵川を上り750m,800m付近のアカガシより1卵ずつを採集し.本種の生息を確認.これを飼育した結果6月20日に1♀が羽化している.

530 菅原 隆:愛鷹山越前岳のミヤマカラスシジミ 1820
 1968年8月18日,〔裾野市〕愛鷹山越前岳,2♂♂.この山塊での初記録.スジボソヤマキチョウ,キマダラモドキなど8種を含む.

531 清 邦彦:甲斐常葉の蝶2種 1820
 1968年6月30日,山梨県西八代郡下部町甲斐常葉付近.ホシチャバネセセリ,キマダラモドキの記録.

532 清水克則:愛鷹南麓の蝶 1820-1821
 1968年6月中旬,沼津市大岡沼津高専裏の雑木林.アカシジミ,ウラナミアカシジミ,ミズイロオナガシジミ,ウラナミジャノメなど4種の報告

533 高橋真弓:愛鷹越前岳7月下旬の蝶 1821
 1968年7月26日,駿東郡裾野町〔裾野市〕十里木〜越前岳の尾根までの間.コキマダラセセリ,ウラギンシジミ,メスアカミドリシジミ,ヒメキマダラヒカゲ,キマダラヒカゲ〔サトキマダラヒカゲ,ヤマキマダラヒカゲの2種を含む〕など5種の報告.

534 高橋真弓:富士火山富士宮口2合目付近(富士宮市)の蝶 1821-1822
 1968年8月2日,2合目付近および2合目林道.ウラギンシジミ,メスアカミドリシジミ,ツマジロウラジャノメなど12種の報告.

535 高橋真弓:身延山のキマダラモドキ 1822-1823
 1968年7月24日,山梨県南巨摩郡早川町身延山頂上付近,1♂.富士川流域における南限の記録.その他4種の幼虫,成虫を記録.

536 高橋真弓:安倍峠のフタスジチョウ 1823
 1968年7月23日,安倍郡梅ケ島村〔静岡市〕安倍峠の県境付近,1♀.安倍峠の本種の記録としては2番目.その他,梅ケ島側の渓流から峠にかけて8種を採集した記録を含む.

537 諏訪哲夫:天竜市熊坂野峠でギフチョウを採集 1823
 1968年4月14日,坂野峠 2♂♂.

538 諏訪哲夫:天竜市熊のウラクロシジミ 1824
 1967年6月11日.1♀;1968年6月16日,1♀4♂♂,同日同行者が3♂♂を採集.

539 諏訪哲夫:磐田郡豊岡村虫生でミヤマカラスアゲハ 1824
 1968年9月8日.1♂.

540 谷川久男:コミスジとツバメシジミの食草の記録 1824〜1825
 1968年6月17日.富士宮市根原県境付近でコミスジの卵をフジから採集.1968年8月5日,静岡市春日町でツバメシジミの蛹1頭をフジから採集.

541 石間岑生:安倍郡のコムラサキについて 1825
 〔1968年〕8月,安倍郡玉川村内匠,腰越付近.同清沢村坂本一色付近.同梅ケ島村〔以上静岡市〕大谷崩エンテイ付近でコムラサキ,クロコムラサキを採集し,前2地域はクロコムラサキが多いことを報告.

 駿河の昆虫 No.64 (発行:1968年12月31日)

渡辺一雄:クロコムラサキの飼育観察よりえた知見 1827-1830
 1968年6月2日に天竜市で産卵中のクロコムラサキ1♀を採集し,これより得たた卵から45頭をふ化させてこのうち39頭を羽化させた.この39頭のうち黒色型は22頭であった.これらの飼育経過,翅開張,羽化時刻,黒色型と正常型の出現比較などについての観察と調査結果を報告.

田島 茂・北条篤史:釜無川周辺の蝶類分布調査(W) 1831-1840
 1968年4月〜7月,8回にわたって,[山梨県]甘利山,大武川流域,日向山,日野春付近など釜無川周辺の各地を調査.ギンイチモンジセセリ,ヘリグロチャバネセセリ,ウスバシロチョウ,ヒメシロチョウ,クモマツマキチョウ,ヤマキチョウ,ウラナミアカシジミ,コヒョウモンモドキ.クロヒカゲモドキ,ウラジャノメ,キマダラモドキなど47種の報告.

安本潤一:1968年安倍川上流地方の蝶 1840-1849
 1968年5月5日〜9月22日までの期間,静岡県立静岡高校生物部によって採集された安倍川上流の安倍郡井川村〔静岡市〕.安倍郡梅ケ島村〔静岡市〕における8科62種を記録.おもな種はベニヒカゲ,フタスジチョウ,ウラクロシジミ,ヒサマツミドリシジミ,フジミドリシジミなど.〔No.66でキマダラヒカゲを2型に分類して再度報告.〕


      インセクトノート
542 北条篤史:山梨県大月市初狩付近の蝶 1850
 1968年4月17日,初狩〜丸田〜大幡乗越.ミヤマセセリ.ミヤマチャバネセセリ,ツマキチョウ,ヤマキチョウ,モンシロチョウ.モンキチョウ,ルリシジミの報告.