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<静岡昆虫同好会ニュース 1957年 No.1>

● 目 次
 高橋真弓:ギフチョウの食草を調べましょう (No.1-1)
 虫界時評 目に余る新昆蟲の誤植 (No.1-2)

 静岡昆虫同好会ニュース No.1-1 (1957年4月25日)

  ギフチョウの食草を調べましょう 高橋真弓

 新昆虫4月号(Vol.10, No.4,1957)に葛谷健氏と共著で"ギフチョウはカンアオイ属Heterotropaなら何でも食べる"と題して,ギフチョウの食草がこれまで"カンアオイ"として詳しい種の同定が行なわれることなく報告されることが多く,これからは各産地でギフチョウの食草が発表されるときは単にカンアオイとしてではなく,なるべく専門家の同定をへて,学名をつけて発表さるることが望ましいと言う一文を書きましたが,もう読まれた方もあると思います.

 静岡県及びその附近で,これまでに卵或は幼虫が採集されたカンアオイ属の植物は安倍川以東ではランヨウアオイ1種が確実に食餌植物として知られ,これからは庵原郡内房村の564m標高点附近,富士宮市明星山,沼久保駅付近,南巨摩郡富沢町峯附近から確実に卵がとれています。この地域では他にカギガタアオイがかなりみられ,この植物からも卵が見つかる可能性が大きいので注意を要します.


 天竜川以西ではキンキカンアオイ(=ヒメカンアオイ)が知られ,浜松市谷(旧都田村)における岩田昭夫氏の記録があります.このカンアオイは愛知県から岐阜県にかけては広くギフチョウの食餌植物となっているようです.

 本会会員の方々にお願いしたいのは,特に安倍川以東において果してカギガタアオイを食するかどうか.特に大丸山や興津町の359m三角点附近近などはこの植物がみられるので注意を要します.また富士川中流地方の南部町から身延町にかけてはランヨウアオイは未発見であり,カギガタアオイの分布が広く,カギガタアオイを食っている可能性は非常に大きいと思います.

 静岡昆虫同好会ニュース No.1-2 (1957年4月25日)

  虫界時評 目に余る新昆蟲の誤植

 最近新昆虫の誤植がめっきり増えたようだ.従来も誤植がなかったわけではない.「オオイチモンジセセリ」のようなはでなミスもあったし,他の出版物に比べて確かに多かったといえる.しかし最近は目にあまるものがある.もっともひどかったのは3月号で,藤村氏の論文には見出しの誤字,行の入れちがえ,図版説明の脱落があり読者を面くらわせる.ムシペン欄には挿図を落とされてしまったものがあり,月評欄では私たちの会誌の紹介に他の会誌の記事がはいってしまった.新年号の石原保氏が誤植が多すぎると書かれた文中にも誤植がある.

 文中の多少の誤植は前後の関係から判読できることが多いが,地名や学名,動植物名は誤植の被害が大きい.新昆虫では著者から訂正の申し入れがない限り正誤表は出ないようだが,編集委員の諸先生がこれを放任しておられるのはどうしたことだろうか.4月号付録の小冊子はなかなか便利な本だが,これにも図版の入れ違えがある.図版の説明の一部が英文で書かれているのは不親切だ.読者に英語の勉強でもしなさいという老婆心だろうか.(N)