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<1984年 駿河の昆虫目次(No.125〜128)>

 駿河の昆虫 No.125 (発行:1984年2月1日)

清 邦彦:静岡県およぴ山梨県における河川敷・提防・海岸の蝶覚え書(3) 3633〜3646
 河川敷・堤防におけるギンイチモンジセセリ,イチモンジセセリおよびその他の蝶の生態,生息環 境の調査報告と植物群落・蝶類群集の遷移についての考察.

 ギンイチモンジセセリの生息環境は「河川敷高位面および堤防のススキを主とした草地」である.また,河川周辺に限らず,駿河の昆虫No.94の報文の追加記録をまとめ,新しい分布図も示している.イチモンジセセリの生息環境は特定できず,「ほとんどのタイプの草原的環境」に幅広く見られる.他に河川敷との結びつきのある蝶として,キアゲハ,モンシロチョウ,スジグロシロチョウ,コムラサキ,ジャノメチョウ,堤防との結びつきのある蝶としてチャバネセセリ,ベニシジミ,ヒメウラナミジャノメ,ウラナミジャノメについてもふれている.
 また,河川敷・堤防における蝶類の調査のまとめの形で「植物群落と蝶類群集の遷移」を考察し,図示している.〔No.128にて,1文字訂正〕

清 邦彦:河津町沼ノ川のテングチョウとスジグロシロチョウ 3646
 賀茂郡河津町.1983年7月21日テングチョウ1頭目撃.同22日オランダガラシより多数のスジグロシロチョウ幼虫を発見.他9種の蝶の名をあげている.

石津明右:浜名湖畔・舞阪町のフタホシコオロギ(クロコオロギ)について 3647〜3652
 日本では奄美以南に分布するフタホシコオロギ(クロコオロギ)が,浜名郡舞阪町で採集された報文.報告者は1982年に鳴声をたよりに採集を試み,19個体の採集または鳴声確認をしている.このうち,1個体は終令幼虫であり,野外で産卵され,成長したものと思われる.また,飼育による本種の生態に関する知見を述べるとともに,体色の変異についても言及している.本種が生育密度効果により,体色が明色化することは,すでによく知られている事であるが,単独で育った個体が黒色になりやすい傾向があることは,この報告においても記述されている.報告者は舞阪町への本種の侵入経路についても述べているが,舞阪町には,本種を大量に飼育している業者があるので,そこから逃げ出した可能性があると述べている.〔その後,編集者(杉本)は浜松市や磐田市で,同様に本種が発見されたという若干の情報を得ているが,本種が越冬して代を重ねたという情報はきいていない.〕

高橋 昭:静岡県におけるウスイロコノマチョウの採集記録 3652〜3654
 1982月10月10日,引佐郡細江町岩根における秋型1♀の記録を報告し,さらに1948年から1982年までの県内における18例の記録をまとめている.〔訂正(No.126):p.3654下1行目747→474〕


      インセクトノート
1016 影山純市:引佐郡細江町のリュウキュウムラサキ 3655
 1983年10月4日,1♀(赤斑型またはパラオ型)を採集.

1017 高橋真弓:富士宮市でリュウキュウムラサキ「赤紋型」を目撃 3655
 1983年9月23日,1♀(赤紋型)を目撃.

1018 大川義一:静岡市内でカバマダラを見ました 3655
 1983年10月1日,静岡市西草深町で目撃.

1019 清 邦彦:清水市草薙でツマグロヒョウモン 3656
 1983年9月23日,1♀を目撃.

1020 影山純一:引佐郡細江町のクジャクチョウ 3656
 1972年10月3日,細江町気賀で1♂,同年10月10日同所で1♂を採集.

 駿河の昆虫 No.126 (発行:1984年5月24日)

高橋真弓:大井川水源地方蝶類分布調査報告(第21報) 3657〜3663
 1983年8月5〜8日,静岡市大井川上流の転付峠〜奈良田越〜東俣および畑薙第一ダム〜二軒小屋において40種を記録.キバネセセリ,ミヤマシロチョウ,ウラクロシジミ,エゾミドリシジミ,エルタテハ,ベニヒカゲ,クモマベニヒカゲなどを含む.ペニヒカゲ属2種の分布,ヒオドシチョウ成虫の活動,ルリタテハ秋型の羽化などを特記.〔p.3660下7行目のコマキダラセセリはコキマダラセセリの誤り.他2ヶ所訂正(No.128)〕

清 邦彦:静岡県およぴ山梨県における河川敷・堤防・海岸の蝶覚え書(4) 3663〜3672
 海岸に生息する蝶類の生態,生息環境の調査報告.ウラナミシジミ(ハマエンドウから卵),イチモンジセセリ(ワセオバナから卵・幼虫,ケカモノハシから卵),モンキチョウ(ミヤコグサに産卵),ヤマトシジミ(カタバミから卵・幼虫),ツバメシジミ,エゾスジグロシロチョウ,アオスジアゲハ,キチョウについて観察.他にシルビアシジミなど数種の蝶についても考察している.また,露岩地,礫質海岸,砂丘の3つの環境における植物群落と蝶類についてまとめている.〔No.128にて,カタバミの見られない所として「砂篠海浜」を「砂質海浜」に,また参考文献の注釈に脱落があったと,訂正〕

白井和伸:水窪駅から水窪ダムの蝶 3672〜3673
 1982年6月13日,磐田郡水窪町,クモガタヒョウモン,オオミスジなど23種の記録.〔No.128で字句の訂正あり〕

白井和伸:水窪町のツマジロウラジャノメ 3673〜3674
 1982〜1983年の磐田郡水窪町白倉川,戸中川,気多川での採集記録.白倉川ではヒメノガリヤスから終齢幼虫3頭,蛹1頭を採集し1♂を羽化させている.〔No.128で性別の訂正あり〕

福井順治:浜松市南部でネアカヨシヤンマを採集 3674〜3675
 1982年8月中〜下旬の4日間に,浜松市米津町から倉松町の砂丘地帯において,4♂9♀を採集した報告(鵜飼貞行氏の2♂2♀,平尾和昭氏の1♀を含む).採集時の状況,産卵の観察とともに,この砂丘後背湿地の水位が,8月上旬の台風とそれに関連した豪雨のために平常よりも上がっていたことを述べている.

高橋真弓・稲葉 茂:山梨県身延山6月上旬の蝶 3675〜3677
 1983年6月5日,11日,南巨摩郡身延町奥ノ院〜感井坊〜高座石〜山門にかけて調査.ウスバシロチョウ,メスアカミドリシジミ,ツマジロウラジャノメなど28種の記録.

新井秀子:山梨県富沢町6月の蝶 3677〜3678
 1983年6月13日,25日,南巨摩郡富沢町福士峰付近のアカシジミ,ウラナミアカシジミ,ミズイロオナガシジミなど24種の記録.


      インセクトノート
1021 高橋優子:山梨県本栖湖のアイノミドリシジミ 3678
 1983年8月19日,〔西八代郡上九一色村〕烏帽子岳登り口で,1♀の採集記録.

1022 高橋優子:井川峠でクジャクチョウをとる 3678〜3679
 1981年9月15日,〔静岡市〕井川峠下の道路で,1♂の採集記録.

1023 高橋明子:静岡市竜南でヤブヤンマをとる 3679
 1983年5月28日,1♀の記録.

1024 高橋明子・高橋優子:アカスジキンカメをとる 3679
 1983年7月28日,榛原郡本川根町梅地で1頭,1983年8月18日,山梨県西八代郡下部町廻沢で1頭の記録.

1025 渡辺一雄:アワフキのあわをなめるウラクロシジミ 3679〜3680
 1983年6月5日,引佐郡引佐町儀光温泉で,本種の1♂がアワブキの1種のあわをなめているのを目撃し,写真撮影した.

1026 高橋真弓:コジャノメの産卵植物チジミザサ 3680
 1983年5月29日,静岡市牛ヶ峰で,葉裏に産卵された4卵を発見した記録.県内では最初の記録.

1027 高橋真弓:静岡市足久保川流域のトンボ類3種 3680
 1983年5月29日,ムカシトンボ,フタスジサナエ,ハラビロトンボ3種の記録.

1028 高橋真弓:ハルザキヤマガラシを食べるスジグロシロチョウ 3681
 1983年5月22日,富士宮市人穴および猪之頭で幼虫と卵を採集し,本種とイヌガラシを与えて飼育した結果,1♀1♂が羽化した.

1029 高橋真弓:ハルザキヤマガラシからツマキチョウの卵を発見 3681
 1983年5月22日,富士宮市猪之頭で1卵発見し,これを飼育したが孵化後3日目に食欲を失って死亡した.

1030 清 邦彦:山梨県身延町・南部町のウラナミアカシジミ 3681〜3682
 1983年6月26日に南巨摩郡身延町波木井坂と南部町北原,7月10日に身延町清子での記録.このほかにミズイロオナガシジミ,オオミドリシジミの記録を含む.

 駿河の昆虫 No.127 (発行:1984年9月25日)

高橋真弓・白井和伸:北遠地方広葉樹林におけるアサギマダラの生態記録 3683〜3684
 1984年7月15日,磐田郡水窪町の秋葉山〜水窪ダムにいたるスーパー林道の尾根すじにおいてアサギマダラに関する調査を行った報告.五丁坂頭北々東尾根<1260m>でオオカモメヅルから卵・幼虫を発見.同地において1♂を採集し,3頭を目撃.また,常光寺山東側の小峰<1420m>付近でイケマからから卵を発見.〔No.128で学名のつづりを訂正〕

高橋真弓:静岡県およぴ山梨県南部におけるアサギマダラの記録と季節・標高との関係 3685〜3693
 静岡県および山梨県南部におけるアサギマダラの記録を本誌と筆者未発表記録をまとめて報告.月ごとの記録と標高による発生状況では,月ごとの採集地,頭数を標高別に分類し,それらを表にも示した.また,季節・標高と吸蜜植物を表に示した.越冬地の問題では,静岡県内の越冬地,二次発生地(イケマ自生地)を紹介し,移動問題では,本種の長距離移動の例の紹介と平地と山地の短距離移動の個体群の存在も推定.静岡県の食草はキジョラン,イケマであるが,ガガイモ科植物6属16種を表示.

高橋真弓:アサギマダラがコカモメヅルに産卵 3693
 1984年7月25日,御殿場市乙女峠付近でコカモメヅルから卵1個を発見.〔No.128で字句訂正〕

高橋明子:静岡市大浜海岸のアサギマダラ 3693
 1983年10月25日,海上から海岸に向かって飛来した2頭を目撃し,これらの個体は伊豆半島から飛来と推定した.

池田二三高・大石剛資・清邦彦・高橋真弓・細田昭博:愛知県伊良湖岬におけるアサギマダラの移動に関する調査 3694〜3701
 1983年9月10日,10月2日,10月9日,10月16日,10月23日に,愛知県〔渥美郡〕伊良湖岬一帯においてアサギマダラの移動コース,日周活動,移動期間などについて調査.移動の主コースは南側海岸沿いに半島先端部(伊良湖岬)に進み,そこから南西方面海上へ抜ける.移動期間は9月下旬〜10月下旬で,最盛は10月9日前後と推定.移動の日周性は6時台から始まり午前中が最盛で午後はほぽ終息する.その他移動に関連した生態的知見2,3を報告.〔No.132で郡名の誤りを訂正〕

阿江 茂:渥美半島におけるアサギマダラの越冬について 701
 1984年4月23日愛知県〔渥美郡〕渥美町の泉福寺において幼虫2頭を採集.この幼虫を飼育したところ5月20日と24日に羽化したことを報告.

白井和伸:観音山におけるアサギマダラの越冬について 3702〜3704
 1984年1〜4月に引佐郡引佐町観音山で幼虫の越冬について調査.当地ではキジョランにおいて,冬期間1〜5令幼虫が認められ個体数も多いことから,越冬可能地であることを報告.

石津明右:アサギマダラ雑記 3705〜3707
 1952年10月5日,愛知県〔渥美郡〕伊良湖岬の宮原原生林内で多数目撃したことを報告.1967年10〜12月,1971年10月〜1972年4月浜名郡舞阪町での観察結果,1980年10月〜1981年4月の愛知県豊橋市雲ノ谷町,嵩山町,本坂峠東側中腹での観察記録を報告.また,1983年10月16〜28日に愛知県〔豊橋市?〕蔵王山,本坂峠,岩屋山において成虫の移動調査結果を表示して報告.

福井順治:清水市でアサギマダラの越冬幼虫を確認 3707
 1984年4月22日,清水市山原池北方でキジョランから2頭の幼虫を採集.

白井和伸:浜松市中心部でアサギマダラを目撃 3707
 1983年10月12日,浜松市連尺で成虫1頭を目撃.

菊地泰雄:静岡県およびその周辺のアサギマダラの採集・目撃記録 3708
 1980〜1983年の筆者の記録24点を報告.

清 邦彦:私のアサギマダラの記録 3709〜3710
 1962〜1984年,静岡県および山梨県における筆者の採集記録を報告.なお,この中にはすでに本誌などで発表した記録も含まれている.また,清水市伊佐布で1984年1〜3月に調査した越冬幼虫の記録を報告.

白井和伸:オオカモメヅルによるアサギマダラの飼育について 3711
 1984年7月15日,磐田郡水窪町でオオカモメヅルからアサギマダラの卵を採集.その飼育を試みたが途中で死亡したことを報告.

白井和伸:アサギマダラの採集・目撃記録 3711〜3712
 1973年〜1984年,愛知県,静岡県,長野県における筆者の16点の記録.〔No.128で字句訂正〕

 駿河の昆虫 No.128 (発行:1984年11月30日)

奥田宜生:静岡市周辺におけるヒラヤマコブハナカミキリの生態について 3713〜3720
 筆者の永年の研究調査から幼虫の食餌植物となる材が落葉広葉樹のカエデ,ヒメシャラ,アカメガシワ,ズミ,ナツツバキ等であることが判明.生態ではホスト植物の生木の空洞内に産卵された本種の幼虫が芯材を食し成育していく過程が若令幼虫から終令幼虫まで観察報告されている.飼育の実例として1981年9月26日富士山麓で採集した幼虫が1984年3月14日〜22日の間に羽化するまでの様子が詳細に報告されている.また,狭い樹洞内での捕食者としてクモ類,ムカデ類,天敵としてアオゲラが報告されている.採集記録地として富士山,静岡市梅ケ島,静岡市三ツ峰,静岡市八紘嶺,静岡市平山〜竜爪山が付記されている.〔筆者がここに発表した画期的な報文が出される以前,本種の生態については全く知られておらず,わずかに成虫が春先,カエデ花上や林道上で稀に採集されるといった程度であった.この直前に発行された「日本産カミキリ大図鑑」においても十分な説明はなく寄主植物もスギとなっている.この報文が発表されるや全国のカミキリムシ研究者に強烈なインパクトを与えた.  以降カエデなどの空洞木より採集される事例が各地より報告されている〕〔No.131にて訂正.p.3713下4行目「もっぱら」を削除.p.3714下9行RhodedronRhododendron,p3717上13行目素材→表材,下4行目樹液の多い若木→低標高地帯で樹液の多い若木,下3行目同一寄主木内→同一寄生木内,下2行目中心部を食い進むものの他は深く食入することなく→中心部を食い進むもの以外は深く食人することなく.p3719生態的なも→生態的にも〕

高橋真弓:キマダラモドキの採卵と母蝶の寿命 3720
 1983年9月4日に山梨県南巨摩郡中富町飯富および下田原で採集した各1頭の母蝶に産卵させ,それぞれ136卵と132卵を産み,34日と36日間生存した記録.

清 邦彦:静岡県および山梨県における河川敷・堤防・海岸の蝶覚え書(5) 3721〜3737
 これまでの調査の総括として,暖帯における非森林的環境とそこに生息する蝶類について考察.まず「日本における非森林的環境」を成因・歴史性にもとづいて分類し,それぞれの環境とそれに結びつきの強い蝶類について考察している.また,従来「史前帰化植物」と言われてきた植物について再検討し,中でもカタバミ,ミヤコグサ,カナムグラについてはもとから日本に生育していた可能性を提案している.つぎに「暖帯に生息する非森林性蝶類の特徴」として,分布系統ではシベリア型とマレー型の種が多いこと,移動性,陽地性,訪花性,多化性,小型,r戦略種の多いことを指摘.その中で少し性格が異なるとして,ヤマトシジミとシルビアンシジミを取り上げ,両種は海岸起源の蝶であるとしている.最後に,これら暖帯の非森林性蝶類が日本に侵入した時代や,気候や人為作用による環境の変化について考え,21種の蝶についてはその生息地の変化を個々に具体的に検討している.〔No.131にて言葉の誤り3か所を訂正,No.132にて訂正文の不備を訂正〕〔全体で合計86ページにもなる長い報文であるが,最後に「摘要」としてまとめてある〕

奥田宜生:ベニバハナカミキリの採集例 3738
 静岡県下における採集記録の少ない本種の記録.1979年7月13日,静岡市(旧井川村)車屋沢,1♂シナノキ樹洞内より記録.他に1981年同所,1982年表富士(標高600 m付近),1982年表富士西目 塚の記録.

奥田宜生:ヒゲブトハナカミキリの羽化例 3739
 1980年4月,榛原郡中川根町山犬段,1982年9月静岡市八紘嶺にて採集した幼虫の羽化例で,成虫の採集例は極めて少ない.